眠りについたこの街が、30年以上の時を経て今甦る。

書店員応援コメント

●第一回

宇田川拓也(うだがわ・たくや)
ときわ書房本店

近頃惚れ惚れするような
筋の通った大人を見ないと
お嘆きの方へ

第一回車が走れば走るほど燃料が減っていくように、日々生きていると己の芯とでもいうべきものが削られ、次第に痩せていく。この失われた芯の太さを取り戻す方法はひとそれぞれだが、私の場合は、北方謙三〈ブラディ・ドール〉シリーズを読み返すことがなによりの特効薬だ。

日本エンタテインメント史上比類のない絶対的存在である主人公―川中良一をはじめ、キドニー、藤木年男、坂井直司、秋山律、遠山一明といった名キャラクターたちが織り成す強烈かつ極上の物語は、魂に熱が灯るがごとく刺激的で、躰の内側に芯の硬さがみるみる甦ってくる。十代の頃は単に「カッコイイ!」とシビレるばかりであったが、四十歳を迎えて読むと、人間の、男と女の、哀しさ、儚さ、愚かしさがより際立って胸に沁みるとともに、なにをおいても譲れないもの、これだけは一歩も退けないことがいまのお前にはあるか? と静かに迫られているような威風を覚え、圧倒される。

とにかく夢中にさせてくれる物語をお求めの方はもちろん、抗うことよりも怯むこと、粘ることよりも諦めることに慣れてしまった気がしてうつむいている方、近頃惚れ惚れするような筋の通った大人を見ないとお嘆きの方は、ぜひ第一弾『さらば、荒野』を手に、〈ブラディ・ドール〉の世界に足を踏み入れていただきたい。そして、『碑銘』、『肉迫』……と読み進めていくうちに気づくはずだ。物語が自身の血肉となり、憂さや虚しさが消えていくことに。

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