眠りについたこの街が、30年以上の時を経て今甦る。

ブラディ・ドール

川中良一 ……かわなか・りょういち

「俺の勝手さ。借りってやつは、貸した方より借りた方の気持を重くする」
「人は簡単に死ぬぜ、キドニー。俺の手はそれを知ってるよ」

N市にある、この街で唯一の会員制高級クラブ「ブラディ・ドール」オーナーで、他にバーとキャバレーを経営。大学時代はアメフトの選手として知られる存在だった。東京での会社員時代、婚約者を巡り人を殴り殺してしまった過去がある。N市に流れ着いた当初はダンプの運転手で、そこから事業を興した。川中を知る男たちからは「走り始めりゃ、止まらん男」「死ぬことを、なんとも思ってねえ」「それが、あの人の魅力でもある」などと評される。

●風貌… 笑うと少年のようなあどけない笑顔を見せるが、時々、驚くほど暗い目をする。躰つきはがっしりしており、左の二の腕に大きな刀傷と足にも多くの傷跡がある。

●嗜好… シェイクしたドライ・マティニィとジン・トニック、ワイルド・ターキーを好む。ライフルの腕前はかなりのもので、拳銃も警官並みに扱える自信がある。

キドニー/宇野雄一郎 ……うの・ゆういちろう

「わかる、というより見える。こんな躰だからこそ、見えなくてもいいものまで見えちまう」

弁護士。川中とは大学時代の同期。東京で法律事務所を開く予定だったが、その修業中に交通事故に遭い、腎臓を二つ失う。その後故郷のN市へ戻った。キドニー(腎臓)は川中がつけたニックネームで本人も気に入っているようす。川中とは深い絆で結ばれていたが、ある事件をきっかけに決裂していく。

●風貌… 顔はむくみ太って見えるのに、躰つきは痛々しいほどに痩せている。腎臓以外に事故の後遺症は見当たらず、右眉の上にうがったような穴の傷跡があるだけ。

●嗜好… パイプ煙草を愛飲し、ベントステムのブライアパイプなど高級パイプを使用している。ジャック・ダニエルをストレートで飲む。

藤木年男 ……ふじき・としお

「手になじんだ拳銃というやつは、時々持主の意志を早く読み過ぎたりしますから」

スナック「レナ」のバーテン。東京にある中原組の元幹部。組長と大幹部を殺してN市に流れ着いたが、廻状が出回り命を狙われている。川中はバーテンとしての腕を買うと同時に、強く惹かれるものを感じて目をかける。やがて「ブラディ・ドール」に引き入れられ、二巻ではフロアマネージャーに。

●風貌… 川中と同じくらいの年恰好。小柄で無表情、刈り上げた髪の額のあたりは薄くなり始めている。どこか翳を帯びた表情で、ほとんど口をきかない。

●嗜好… バーテンにしては珍しくジッポーを使用する。ワルサーPPK/Sオートマチックとコルト・ガバメントを所持。タンカレーのストレート、ジン・トニックをときどき飲む。

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