本当に満足なセックスをしたことはある? 初老の男女のリアルな性を描きながら、作者の眼は、その性の向こうにあるものをひたと見据えている。その透徹な視線があぶり出すのは、むき出しの「人間の本質」であり、男女の「すれ違い」である。吉田伸子氏(書評家)絶賛。夫と妻と愛人の心理と生理をあますことなく描いた究極の恋愛長篇、書き下ろしで遂に登場。「折角のきれいなボタンは全部外され、あらわになった胸の上に夫の頭が乗っている。夫婦は十年ぶりにセックスに挑み、そしてまだ成し遂げていない。妻は同窓会で四十年ぶりに会った男の夢を見ている。夫も、他の女の夢を見ているだろう。夫のことは考えまい。どうせなら、夢に出てきた人のことを考えようとふみ子は思う。――本文より」