「私は気がついたの。自分の心の奥にある、恋の力に」「恋の力?」「そうよ」私は、身体の奥で火のついた性の欲望に気づいて、とまどっているのだと思っていた。欲望に気づかせた甲斐に、復讐したかったのだと。でも、性の欲望だけなら、いつまでも、とまどったりしなかっただろう。そのうちに整理をつけて、欲望を楽しんでいただろう。いまどきの女は、そのくらいの狡さと賢さは持っている。あのとき、私は、自分の中にある、訳の分からない力に気づきはじめていた。身体の奥底に沈み込んだ重い力。人を揺るがすような大きな力。はるか昔から、人の心の奥に潜んでいる熱い火。