時は二十九世紀。宇宙開発の先駆けとしていちはやく”地球化改造(テラ・フォーミング)”が実施されていた火星は、その自由を尊ぶ気風から、男女の姓の決定をも自ら選択する「モラトリアム」という存在を生み出していた。モラトリアムの一人、アニス・ソーヤーは火星考古学者トシオ・イサカ・ヴァインズを導師として、性決定のための火星運河の旅へと出るが、その途上、原火星文明にかかわる衝撃の事実を知る。 一方、木星周辺の外惑星連合では、資源採掘をめぐり火星との関係が悪化、さらに地球より派遣された調停者の拉致事件も発生していた。緊迫の度が高まる中、事件の捜査に乗り出した女性議員リン・ワースリーの前に、地球・火星・木星を巻き込む、ある陰謀が浮かび上がってくるのだった。人類の宇宙進出を根底から揺るがす二つの事態は果たして……。 広大な宇宙と未来のヴィジョンを通じて生命の無常と文明の儚さを謳い上げる一大宇宙叙事詩。
- SF・ホラー・ファンタジー
- 四六判上製
- 336P
- 489456-928-0