アメリカでもマルティニック島でも日本でも、ハーンはつねに「小さきもの」を注視してきた。つましい生活の細部、場末の音楽、クレオール料理、町の物音、墓牌銘、虫の鳴き声、玩具、女性の髪型・・・・・・。この本を書きながら確かに見えてきたことは、そんなふうに小さなものにむかうハーンの知覚が、人間も生物も、あくまで連続したひとつの生命の環のなかで捉える巨大な世界のイメージとともにあったことである。――現在、出版界で一番熱い注目を浴びている哲学者であり、フランス文学者である著者による、渾身の書き下ろし。比類なき視野の広さと思想の深さをもつ、新たなるハーン=八雲論の登場!