菊園平次郎と同じ長屋に住まう長谷川は胃の腑の痼りから病の床に臥せっていた。彼には九年前に捨てた女房のなおがいたが、彼女は現在、荒物屋を商う若狭屋の主と娘おトクとの平穏な暮らしを築いていた。刻々と酷くなる病の中、幸せそうななおの暮らしぶりを他所ながら覗き見することを生きる支えとしていた長谷川。そんなある日、若狭屋の存続を脅かす大きな事件が起こる――。病を押してでも、なおとその家族を守ろうとする長谷川の姿に、見るに忍びなくなった平次郎は、力を貸すことに・・・・・・(「霜夜のなごり」より)。大好評シリーズ、待望の第三弾!!