文久三年三月――上洛する将軍一行を一目見んと集う野次馬の中に、玄遊堂の面々もいた。佐幕意識の強い武州多摩から半年前に京へ来た水野八重太は、背丈の低さゆえ人垣に阻まれ、苛立ちを隠せない。そんな状況を同塾の変人たちにからかわれ激高する水野の気持ちを逆なでするように、同い年ながら反りが合わない秋貞司郎が、一言もなく姿を消す。水野は対抗心から、秋貞のことが気になって仕方がないのだ。元々謎めいている秋貞だが、この十日ほどはとみに動きが怪しいという。ある日突然、裏長屋で秋貞の姿を目にした水野は……。風雲急を告げる幕末の京を蘭学塾生が駆ける、大好評シリーズ第二弾!!