前漢の中国、武帝・劉徹の治世。匈奴との激しい戦いが繰り返されるなか、無謀とも思える戦を強いられた漢の李陵は、歩兵のみで数日間耐え凌いだものの、力尽きて匈奴に降伏する。時は過ぎ、故国から一族の抹殺という族滅の報いを受けた李陵は、軍人として匈奴で生きることを誓う。一方で、匈奴で囚われの身となり、北の地に流された蘇武は、狼とともに極寒を生き抜き、自らの生きる理由を問うのだった――。忍び寄る老いへの不安を募らせる劉徹の姿を、冷徹に記す司馬遷。匈奴の最精鋭兵を指揮し、漢軍を追い込む頭屠。そして、李陵と蘇武は宿星が導きし再会を果たす。二人の星は時代に何かを問うのか、北方『史記』佳境の第六巻。