幕府から徳政令がでるという風評が聞こえる中、札差の大口屋の主・文七は、その真偽を見極めるために奔走していた。本当に徳政令がでて、旗本たちに貸している金がすっかり棒引きにされたら、札差は立ち行かないのだ。やがて天明から寛政に年号が変わり、桜が満開になるころ、女房のみつが死んだ。出逢い茶屋で役者と心中したのだという。だが、どうしても自分の女房が心中したことに納得できない文七は、一人探索を続けるのだった。「みつは殺されたに違いない」一方で、大口屋の大旦那が八人の分家にしかけた勝負――花魁・瀬川に惚れさせた男に自分が持っている貸し金の証文を全部与える――に勝った文七は、やがて瀬川を身請けする。深く惚れあった二人は新居で幸せな日々を過ごしていたのだが、ある日突然に極楽が地獄へと変わってしまう。二人の行く末は果たして……。