日本橋の木綿店の通い番頭・半兵衛の長男として生まれ、十三歳で父と死に別れた半七。道楽肌の彼は、堅気の奉公を好まず、神田の岡っ引き・吉五郎の子分になる。一年ばかりその手先として働いているうちに、いよいよ功名をあらわすべき時節が到来した――(「石燈籠」)。〈元祖・捕物帳〉の『半七捕物帳』は、絶妙なトリックと正確な時代考証を誇るがゆえに、数多くの捕物帳の中で別格の〈最高傑作〉ともいわれる。その珠玉の全六十八編から、半七初登場の「お文の魂」をはじめ、彼が十九歳から二十五歳の間に解決した事件を中心に綴られた六篇を厳選。江戸の町を、若き日の半七親分が駆ける!(解説・末國善己)