士分を捨てるか、妹を売るか。どちらかを選ばねばならぬ――。豊岡民之助は、妹の久実とともに、庭の畑で茄子の取入れをしていた。両親を相次いで亡くした、ふたりきりの家族。収穫の喜びは、何にも代え難い。だが彼らは、父が遺した莫大な借財によって窮地に立っていた。民之助は返済の相談のため、札差・田屋を訪れるが……。日々の労苦に凛と立ち向かう武家の兄妹。田屋の若旦那・新五郎がふたりに持ちかけた「生きる道」とは。情味溢れる書き下ろし長篇。
士分を捨てるか、妹を売るか。どちらかを選ばねばならぬ――。豊岡民之助は、妹の久実とともに、庭の畑で茄子の取入れをしていた。両親を相次いで亡くした、ふたりきりの家族。収穫の喜びは、何にも代え難い。だが彼らは、父が遺した莫大な借財によって窮地に立っていた。民之助は返済の相談のため、札差・田屋を訪れるが……。日々の労苦に凛と立ち向かう武家の兄妹。田屋の若旦那・新五郎がふたりに持ちかけた「生きる道」とは。情味溢れる書き下ろし長篇。