戦国時代の城は、戦いのための要塞であると同時に、国を治める政治の場でもあり、芸術建築でもある。侍は城を求め、城とともに死する――。名城は、城主やその妻子たちの物語を帯びるのだ。そうした名城の来歴や戦いの物語を、実力派作家が描いた傑作短編を集収。真田一族が謀略を尽くして得た沼田城と天下統一に向かう秀吉を描く池波正太郎「命の城」、国宝となった松江城建築の秘話を記す南條範夫「松江の人柱」、敗北の際の下級武士の奮闘を書く中村彰彦「開城の使者」、女城主による秀吉との激闘を活写する東郷隆「忍城の美女」を含む、珠玉の名作八篇を収録。