八代将軍・徳川吉宗と尾張藩主・徳川宗春の対立が水面下で繰り広げられる元文の世。尾張徳川家の甲賀同心組頭・左内は、幕府転覆を謀る宗春の願いを叶えるべく諜報活動に命を賭けていた。長崎出島に計略成就の鍵があると睨んだ左内は、愛弟子の女忍び・雪野を長崎の遊郭に太夫として潜入させる。そこで彼女は蘭館医師・ヘンドリックと出会う。忍びとして主の夢を叶えるために生きていた娘が、女として異国の男を愛してしまい――。第六回角川春樹小説賞受賞作のデビュー作にして、第三回野村胡堂賞受賞作、待望の文庫化。(解説・吉川邦夫)