後に「独眼竜」と呼ばれることになる戦国武将・伊達政宗。知恵で政宗を支えたのが片倉小十郎に対して、戦いの中核として、正宗の命を救いながら数多くの戦果を上げたのが、猛将・伊達成実である。政宗より1歳年下の伯父として生を受けた成実は、幼き時より政宗とともに育ち、伊達南領の地を守る要衝・大森城の城主として、その天下への野心を支え続けてきた。また伊達家第一席の重臣である彼は、人取橋の戦いでは、伊達勢が潰走する中にあって奮戦して政宗を逃がし、会津を攻め落とす際の中核としての軍功を上げ続けてきた。だがその生涯の謎とされているのが、豊臣秀次が謀殺された後の謎の出奔とその後の帰参である。右手に大やけどという武将としては致命的な負傷を得ながら政宗の右眼にならんと生涯を戦い続けてきた猛将は、なぜ伊達を去り、また戻ってきたのか。俊英・吉川英青が描く男の生涯。