事件は人間の内にある。直木賞受賞後、第一長篇。いくら、陣屋の元締め手代に上り詰め、土地の人間の敬意を一身に集めても、信郎にとっては、そこは励み場ではないのだ。いまの信郎が、己の持てる力のすべてを注ぎこむのに足りる場処ではない。信郎が妙に金に身ぎれいで、身代を大きくするのに関心を示さないのも、信郎の励み場が陣屋にではなく、武家にあるからだろう。(本書より)信郎は江戸へ出て勘定所の下役になり、実績を積み上げて、真の武家を目指すのだが……。「仕事とは何か」・「人生とは何か」・「家族とは何か」を深く問う書き下ろし時代長篇。熱望の書き下ろし時代長篇。