天文十九年(一五五〇)、武田晴信(後の信玄)が北信濃の村上義清の戸石城に侵攻。しかし、攻めきれずに退却することに。徒士兵の雨宮佐兵衛と、その小者の半助は殿の一員として戦うが、味方は総崩れとなる。北信濃の地に取り残された二人は落ち武者狩りの追手を振り切り、ひたすら味方の地を目指して山野を駆けずり回る。傷を負った佐兵衛を背負い、「何としても奥様の元に旦那様を連れて帰るだ」、その思いだけを支えに奮闘する半助。全知全能を懸けて逃げる、もののふの物語。壮絶な負け戦さ「砥石(戸石)崩れ」からの逃亡を小者の視点で描く。