明治のはじめ海を越えてやって来た異人たちが闊歩する、日本最先端の街・横浜にやって来た庭師の息子・藤野辰吉ことコタツ。今までになかった職業「新聞売り」となり、暴れ馬に撥ねられて足を悪くした妹の絹や、小説を書き糊口を凌ぐ元武士の小見山らに囲まれ、貧乏ながらも日々を過ごしていた。しかし「薄幸な美女」に弱い辰吉は、商売そっちのけで事件に巻き込まれた女性を助けて横浜を駆け回る羽目に。〈横浜ガス局事件〉〈幽霊アンマの謎〉──。はたして事件の果てにコタツは何を見たのか、そして江戸と明治の狭間にある闇とは……。第八回角川春樹小説賞受賞作家の受賞後第一作、ここに登場!