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今月のインタビュー

小杉健治(こすぎ・けんじ)

小杉健治(こすぎ・けんじ)
1947年東京都生まれ。
83年『原島弁護士の処置』で第22回オール讀物推理小説新人賞を受賞し、デビュー。代表作に『絆』『土俵を走る殺意』などがある。

悪人面だが頭の切れる平助、怪力が取り柄の次助、臆病だが歌舞伎役者並みの美貌を持つ佐助。この三兄弟が一人の岡っ引き「佐平次親分」となって数々の難事件を解決していく『三人佐平次捕物帳』。
多彩な登場人物と本格的な時代推理小説としての魅力で人気を集めるこのシリーズも、新作「ひとひらの恋」で早くも十六作目を数える。
精力的にその執筆を続ける作者・小杉健治さんに、「佐平次親分」誕生のいきさつ、そしてシリーズのこれからについて聞いてみた。

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小説家を目指されるようになったきっかけって、何でしたか?

小杉> 僕は小説を本格的に読み始めたのが二十歳くらいからなんです。その頃、社会派推理小説の全盛期だったんですね。松本清張さんとか、あと森村誠一さんもちょうどその頃デビューされて。僕は当時コンピュータ関係の会社に勤めていたんですが、そういう時期なので同僚にも推理小説好きがけっこういたんです。それでお金出し合って本を買って、会社に置いておいてみんなで回し読みしたりしてるうちに、どんどんのめりこんでいったんですね。

そういう推理小説好きの中で、作家を目指して『オール讀物』の新人賞にも応募している先輩がいたんです。その人と「僕も松本清張とか好きなんですよ」という話をしてるときに、「じゃあ小杉君も書いてみたらどう?」って言われたんですね。そのときは自分に小説なんか書けるわけないと思ってたんだけど、もうすぐ三十歳になるというときに、自分の将来をふと考えてしまったんですよ。このまま会社員続けていっていいんだろうかと。そのときにその先輩の言葉を思い出して、二十代の記念として『オール讀物』の新人賞に応募してみたら、第一次予選を通っちゃった。

すごいですね。最初の応募でいきなりですか。

小杉> そう、それで自分でも「これはいけるんじゃないか」という気になって毎年応募するようになったんですが、後で新人賞取ってから編集者に聞いたら、「あれはだいたい誰でも載せるんだ」と。そういえば確かに、二ページに渡って名前がずらっと載ってた(笑)。

最初に応募された作品はどういう内容だったんですか。

小杉> 最初は本格派推理だったんです。江戸川乱歩とかもけっこう読んでたので。その路線で一次予選を二回通って、それから二次予選を二回と、だんだん上がっていった。それで次は絶対、最終候補まで行けるぞと思ったんですが、これが一次予選も通らなかったんですよ。それでショックを受けて改めて募集要項を読み直してみたら、「社会の矛盾を追及する作品を求める」といったことが書いてあったんですね。それを読んで、もしかすると自分はこっちの方が向いてるんじゃないかと。それで方向転換したら、次の応募作品が最終候補に残って、その次でついに新人賞をいただいたんです。

デビューされてからは法廷ものを中心に社会派推理小説を多数お書きになられていますが、そこから時代小説の方に移られたのは、何かきっかけがあったのでしょうか。

小杉> 実は法廷ものを書いてるときから、将来は時代小説を書きたいと思ってたんです。小さい頃から東映のチャンバラ映画が好きだったので。あと、僕は浅草や向島といった下町で育っているので、そういった馴染みのある場所を舞台にした小説を書きたいというのもありました。

ただデビューした当時は、まだ自分は時代小説を書けるレベルじゃないと思ってたんです。昔の東映時代劇のスターってだいたい歌舞伎役者なんですが、歌舞伎役者の殺陣って綺麗なんですよね。立ち姿も綺麗。それは日本舞踊の素養があるからなんです。日本の伝統的な文化が身についているから様になる。だから時代小説を書くにも、そういうものを身につけないといけないだろうと思っていたんです。それで僕は小唄を習い始めまして。小唄っていうのは江戸の風俗とかを描いてるんですが、そういうのを長くやっているうちに、ようやく自分でも時代小説を書く自信がついてきたんです。

子供の頃からの憧れがある分、こだわりも強かったんですね。たしかに『三人佐平次捕物帳』もいろんな部分で江戸の情緒が感じられます。ところで『三人佐平次捕物帳』はやはり、三人で一人という設定が非常に独特で面白いと思うんですけど、どういったところから生まれたのでしょうか。

小杉> 町を一日歩いてると、不愉快な思いをすることってけっこうあるじゃないですか。強引に電車に乗り込んでくる人がいたりとか、煙草の吸殻をポイ捨てしてるのを見たりだとか。でも僕なんか気が弱いのでなかなか注意できないんですが、もし自分に腕力があれば、あるいは自分がヤクザのせがれで傍に強い用心棒がいたりしたら、自分が弱くても注意できるのになあ、なんてことを常日頃なんとなく考えていたんです。あと、江戸時代の資料を調べていると、岡っ引きがいろいろ悪いこともしていたというのが分かってきた。だったら善い岡っ引きを作ろうと考える人もいたんじゃないかとか。でもそれが小説になるかどうか自分では分からなかったんですが、角川春樹事務所さんから何か書いてみないかというお話をいただきまして、こういうキャラクターでどうですかって話をおそるおそるしてみたんですね。そうしたら、ぜひそれをやりましょうって言ってくださって。

それが三人兄弟の話になったのは、「三人〜」っていう題名にしたかったんです。歌舞伎で『三人吉三』とかありますよね。そういうのがいいなあと。それで何かいい名前がないかなと考えて、落語で『居残り佐平次』というのがあったなと。じゃあ「三人佐平次」ってどうだろうと。それで佐平次という名前を分解して、佐助・平助・次助という三人組の話にしてみたら面白いんじゃないか、と思いついて。

なるほど! 名前から発想されたとは意外でした。三人とも非常に魅力的なキャラクターですが、どのキャラクターが書きやすいとかいったことはありますか?

小杉> 平助が一番書きやすいかな。頭が切れて剣の腕も立つという、かなりおいしいキャラクターなので。ただその分、ちょっと次助が割を食ってしまってかわいそうかなっていうのは思ってて。次助だけが強ければいいんだけど、平助もけっこう強いでしょう。

でも次助がある意味、いちばん人情味のあるキャラクターですよね。おさととの恋物語も、次助の純情さと生真面目さがとても切なくて。

小杉> あれも最初はここまで引っ張る予定ではなかったんですけど、やはり次助の責任感の強さみたいなところをきちんと描いてあげたかったので、ああいう形になったんですね。

佐助も平助が長崎に行ったあたりから随分たくましく成長してきましたね。今度の「ひとひらの恋」では、佐助・小染・お鶴の三角関係が大きく進展するとのことですが。

小杉> はい。佐助は小染とお鶴の間でずっと揺れ動いてきたわけですが、いつまでもそういういい加減なことじゃダメだということで態度をはっきりさせることになります。佐助も最初はもっといろんな女と遊んでばかりいる軽い男にしようと思ってたんですけど、キャラクターって書いているうちにどんどん成長しちゃうんですよね。そこは計算して書いているわけじゃなくて。そして三人がそれぞれ成長していくと互いの関係も変わっていくので、そこが作者としてはけっこう悩みどころだったりします。いつまでも「三人佐平次」でいられるのかとかね。

そこは読者としても気になりますね。今後の展開はどのようにお考えでしょうか。

小杉> 今回、最後で佐助がお鶴と上州の方へ行きますので、次はそちらの話と、江戸に残る平助と次助の話が絡みつつ、という感じになると思います。それから、平助が長崎で出会ったおなみという娘がいますが、これがまた登場して……ということも今後あるかな、なんて考えています。

(本誌から一部抜粋)

インタビュー・青木崇敏
写真・須貝智行

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