累計200万部の突破の大ベストセラー!

北海道警察シリーズ

著者の出身地である北海道という特色ある地域社会現在を、魅力的に描く社会派警察小説

『真夏の雷管』

精密工具の万引き、硝安の窃盗事件、消えた電気雷管。三つの事件がつながったとき、急浮上する真夏の爆破計画。
誰が、いつ、どの瞬間に?
札幌大通署・刑事課の佐伯は、生活安全課の小島百合、機動捜査隊の津久井らと共に、警官の覚悟を見せる。
息もつかせぬ緊迫のクライマックス。
刻限に向けて、チーム佐伯が走る! 書き下ろし長篇。

佐々木譲の直筆サイン

々木譲(ささき・じょう)

1950年北海道生まれ。79年「鉄騎兵、跳んだ」でオール讀物新人賞を受賞。90年『エトロフ発緊急電』で、山本周五郎賞、日本推理作家協会賞、日本冒険小説協会大賞を受賞。2002年『武揚伝』で新田次郎文学賞を受賞。10年『廃墟に乞う』で直木賞を受賞。16年日本ミステリー文学大賞を受賞する。著書に『ベルリン飛行指令』『天下城』『笑う警官』『警官の血』『代官山コールドケース』『沈黙法廷』など多数。

佐々木譲インタビュー

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著者インタビュー

聞き手・杉江松恋(文芸評論家)

『うたう警官』(文庫改題『笑う警官』)に始まった、北海道警察シリーズと、最新作『真夏の雷管』の創作秘話に迫る!

杉江松恋(以下、杉江) これは佐々木さんの作品すべてにいえることですが、社会をさまざまな角度から観察し、さまざまな階層の人間を登場させる。そうした全体小説としての性格と警察小説の要素が合致していて、読み応えがあります。『真夏の雷管』も犯罪の背景にあるものが浮上してきた瞬間に「あ、そこを書くのか」という驚きがあり、堪能いたしました。また、北海道という特色ある地域社会の現在を魅力的に描くという要素も忘れてはいけない点です。毎回あの手この手で犯罪捜査を描いて〈道警〉シリーズでは読者を楽しませてくださいますが、今回の話がどういうところから生まれたものかを最初にお聞きしたいと思います。

佐々木譲(以下、佐々木) そもそもこのシリーズの最初は『笑う警官』に始まる三部作の構想だったんです。

杉江 不祥事の集団隠蔽工作に佐伯たちが立ち向かうというのが第一作でした。

佐々木 はい。それが途中から、警察小説が扱う可能性のある事件を順番に全部やって十作で完結という構想に変わったんです。『巡査の休日』はストーカー犯罪、『密売人』は連続殺人、といった具合に進んできて、今回は第八作ですが爆弾事件を書くというのは早くから決まっていました。シリーズの他の作品もそうですけど、いくつかの小さな事件が全然関係ないように見える形で発生して、あるところでパッとつながる。というのも主人公たちのセクションが、佐伯と新宮は刑事課盗犯係、津久井は機動捜査隊で小島は生活安全課、ということでバラバラですから、いきなり合流するわけがない。四人の警察官たちがそれぞれの抱える事件解決の為に非公式のチームを作り上げる、という形式を毎回踏襲しているのも他の人たちの警察小説にない、このシリーズの特徴ですよね。

杉江 彼らが小説の中でいつチームを組むか、という設計図は毎回おありなんですか?

佐々木 プロットを詰めていく段階で決めています。佐伯と新宮がいるのは不遇な部署で、今回は園芸店で肥料が盗まれるという本当に些細な犯罪の捜査に当たる。だけどシリーズの読者はそれが大きな事件に発展するはずだ、と予想してくれているはずなんです。だから冒頭からいきなり大事件を起こす必要はなくて、そんな小さなことがどんな風に発展していくの、という部分を楽しんでもらうように考えて作っています。もちろん『密売人』のように最初から殺人事件が起きているものもありますし、全部が同じパターンではありませんが、バラバラに見えているものが一つに集まっていくプロセスが基本にはなっていますね。シリーズの中で人気のあるサブプロットは新宮が合コンに行くという話なんですが、読者は「ほら、また呼び出しが来て駄目になるよ」と思って読んでいる(笑)。そういう部分も読者サービスのうちですから、繰り返して書くようにしています。

杉江 今回はJR北海道の構造不況が遠因となる犯罪を扱っています。現在進行形の深刻な社会問題であるわけですが、これは最初からプロットの中にあったのでしょうか。

佐々木 はい。北海道民としてはもちろん、JR北海道については思うところがある。またせっかく北海道を舞台にしているわけですから、警視庁管内であまり起こらないような事件を扱いたいということもあります。例えば『巡査の休日』は「よさこいソーラン」というイベントを扱っていますし、北海道という面白い物語が転がっている地域を舞台にしている以上は、それらしい事件や素材を取り上げたいですね。

杉江 僕の印象では1990年代以降に書かれたミステリー作品においては、佐々木さんが率先して「地方」を描かれていた印象があるんです。もちろんそれ以前にもそういう小説はあるんですけど、北海道という地域の特性をご自分の描きたいものと融合させて書かれた方は佐々木さんより前にあまり例がなかったように思います。

佐々木 地元の人たちはウチのあたりは歴史もないし、とおっしゃるんですが、充分に濃密な歴史があるし物語も転がっているんです。『廃墟に乞う』(第百四十二回直木賞受賞作)はだからこそできた話で、作家にとってはあまり書かれていない物語がゴロゴロしているじゃないかという思いがあります。じゃあ、せっかくだから、警視庁管内の六本木は他の人が書いてくれればいいから、私は自分が住んでいる書けるところを書こうと。

杉江 ミステリーマニア的な見地から申し上げますと、今回の『真夏の雷管』の後半は列車の運行スケジュールが重要な意味を持つ展開になりますね。現代で時刻表を扱ったミステリーをやるとしたらこういう形があり得るんだ、とすごく新鮮でした。時刻表トリックが好きな人にぜひ読んでほしい(笑)。

佐々木 あ、そうか。爆弾事件と言うよりミステリーとしてはそうですね。たぶん大きなトリック上のミスはしていないと思います(笑)。ミステリー作家は、たとえば誘拐事件を書こうと思ったら現実の犯人以上にどうやって犯罪を成功させようかを考えるじゃないですか。エンターテインメントですから事件は起きてほしくないし、絶対に未然に防ぎたいんですが、今回も犯人の側から言えば、当然警察の動きは察知して、その裏をかいて目標を爆破したい。そこの手の読み合いで、時刻表を見ながら考え込みました。

杉江 もう一つは少年犯罪の問題が浮上してきますね。未成年犯罪と、保護者の育児放棄がプロットの中では重要な意味を持ってきます。そうした社会問題についてのくだりが浮き上がらず小説の部品として綺麗に融合しています。特にプロローグは印象に残りますね。

佐々木 ありがとうございます。

杉江 先ほど、小さな事件が大きなものへと発展していくプロセスが読ませどころというお話があったと思うんですが、書き手としてはどこにいちばん体力を使われますか。話のピッチが上がる終盤なのか、それとも仕込みの段階の序盤なのか。

佐々木 最後の三分の一になったらもう勢いで行けますから、その前の三分の二、充分に伏線も張らなければいけない、という方が時間もかかるし、たぶん体力も使っていると思います。それは池澤夏樹さんがロケットに喩えておられましたね。ある高さまではブースターに押し上げてもらうが、あとは燃料の大部分を消費した方が軽くなった分飛んでいける、というようなことを創作法としておっしゃっていたと記憶しています。

杉江 なるほど、でも読者が読み終わったときに「ああ面白かった」って言ってくれるのはその成層圏を脱した後のダッシュしている部分なんですよね。そこまでもっていくには一生懸命持ち上げないといけないのに。これは本当に実作者にしかわからないご苦労ですね。このシリーズは十作と決めておられると伺いましたが、今回が八作目でいよいよ終わりが見えてきました。残り二作の構想はもうできていらっしゃるんですか?

佐々木 はい。九作目ではこれまで扱ってこなかったんですが、さっぽろ雪まつりが背景として出てくる予定です。十作目はシリーズ全体の締めにふさわしい犯罪にしようと思っています。実は最初の三冊の中で、まだ解決していないサブプロットがあるんです。それを扱って、きちんと犯人も断罪して幕引きとしようと。すでに構想はできています。

杉江 実は日本の警察小説で数を決めて完結したものって、まだあまりないんですよ。大沢在昌さんの〈新宿鮫〉にしても十作まで行きましたけど、まだ続いています。もしかすると、初の十作という構想のまま完結するシリーズになるのかもしれません。

佐々木 やりがいがありますねえ。見事に完結させてみせよう(笑)。

既刊本一覧

『笑う警官』
『笑う警官』

道警最悪の一週間の幕開け

郡司事件に揺れる北海道警察……。生活安全部銃器対策課のエースだった郡司徹警部が、拳銃の不法保持、覚醒剤の密売買容疑で逮捕されたのだ。そんな中、郡司の部下だった津久井卓が殺人の容疑をかけられ、やがて津久井に射殺命令が出てしまう。

『警察庁から来た男』
『警察庁から来た男』

新たな波紋を呼ぶ、緊迫の第二弾

北海道警察本部に警察庁から特別監察が入った。監察官は警察庁のキャリアである藤川春也警視正。藤川は、一年前、道警の裏金問題の為に百条委員会でうたった(証言した)津久井卓巡査部長に監察の協力を要請する……。一方佐伯宏一は、“道警最悪の一週間”で道警本部に対して反抗的な態度をとり、盗犯係の遊軍として小さな事件を担当していた。

『警官の紋章』
『警官の紋章』

郡司事件から四年、腐敗の真相に迫る第三弾

北海道警察は洞爺湖サミットのための特別警備結団式を数日に控えていた。そのさなか、勤務中の警官が拳銃を所持したまま失踪。津久井卓は、その警官の追跡を命じられた。一方、過去の覚醒剤密輸入おとり捜査に疑惑を抱き、一人捜査を続ける佐伯宏一。そして結団式に出席する大臣の担当SPとなった小島百合。それぞれが任務のために、式典会場に向かうが・・・・・・。

『巡査の休日』
『巡査の休日』

ストーカー事件を追う、小島巡査大活躍!

神奈川で強盗事件が発生し、犯人の一人に鎌田光也の名が挙がった。鎌田は一年前、ストーカー行為をしていた村瀬香里のアパートに不法侵入したところを小島百合巡査に発砲され、現行犯逮捕された。だが、入院中に脱走し指名手配されたまま月日が経っていたのだ。一方、よさこいソーラン祭りで賑わう札幌で、鎌田からと思われる一通の脅迫メッセージが香里の元へ届く。

『密売人』
『密売人』

新たな裏切り者、現る! 期待の第五弾

十月下旬の北海道で、ほぼ同時期に函館・釧路・小樽で三つの死体が発見された。それぞれ事件性があると判断され、津久井卓は小樽の事件を追っていた。一方、小島百合は札幌で女子児童が連れ去られたとの通報を受け、捜査に向かった。偶然とは思えない三つの不審死と誘拐。次は自分の協力者が殺人の標的になると直感した佐伯宏一は、一人裏捜査を始めるのだが……。

『人質』
『人質』

シリーズ最短のデッドリミット型サスペンス

生活安全課の小島百合は、ピアノのミニ・コンサートに行くことになった。会場であるワイン・バーについた小島は、そこで人質立てこもり事件に遭遇する。犯人は強姦殺人の冤罪で四年間服役していた中島喜美夫。コンサートの主役は、中島が逮捕された当時の富山県警本部長の娘だったのだ。これは単なる謝罪要求なのか。

『憂いなき街』
『憂いなき街』

切ない旋律が流れる、異色の第七弾

サッポロ・シティ・ジャズで賑わい始めた初夏の札幌。機動捜査隊の津久井卓は、当番明けの夜に立ち寄ったバー「ブラックバード」で、シティ・ジャズへの出演を控えるピアニストの安西奈津美と出会う。急速に深まる津久井と奈津美の仲。しかし、そんななか中島公園の池で女性死体が見つかり、奈津美に容疑がかかってしまう……。

主要登場人物紹介

主要登場人物紹介