(新装版)三国志 一の巻 天狼の星/北方謙三

文字が大きくて見やすくなった

馬群馬群

新装版

(新装版)三国志 一の巻 天狼の星/北方謙三

【最新刊】(新装版)三国志 一の巻 天狼の星

北方 謙三

四百年続いた漢帝国は衰退し、崩壊への道を辿っていた。政は乱れ、賊が蔓延る後漢末期の乱世に、ひとりの英傑が立ち上がる。漢の名前は劉備玄徳。義に厚く、漢帝国の復権を目指す劉備の志に賛同し、義兄弟の契りを交わした関羽と張飛とともに、叛乱を起こす黄巾賊との闘いに挑む。新時代を切り開く曹操、呉の礎を築いた孫堅など、群雄割拠の時代を駆け抜けた漢たちを壮大なスケジュールで描く――。 北方謙三の名著「三国志」が装いも新たに「新装版」として登場!! 文字も大きくなって読みやすくなり、往年の三国志ファンも三国志初心者も大満足の一冊。「新装版」第一巻には著者のあとがきを収録。


『三国志』新装版シリーズ続々刊行!

  • 【二の巻】2023年8月(予定)
  • 【三の巻】2023年10月(予定)
  • 【四の巻】2023年12月(予定)
  • 【五の巻】2024年2月(予定)

英傑たちの生き様に刮目せよ!

劉備【玄徳】
出身。漢の中山靖王劉勝の子孫。一八四年、関羽、張飛と義兄弟の契りを結び、黄巾討伐に参加。
関羽【雲長】
河東郡解県出身。劉備、張飛と義兄弟になり黄巾討伐を行う。一九一年、董卓討伐軍に加わり、華雄を斬って勇名を馳せる。
張飛【翼徳】
出身。劉備、関羽の義兄弟となり、常に行動を共にする。
曹操【孟徳】
沛国出身。一八四年、騎都尉として黄巾の乱の鎮圧にあたる。一八九年、陳留で挙兵。翌年、諸侯とともに董卓討伐の戦を起こす。
夏侯惇【元譲】
沛国出身。曹操の部将。
夏侯淵【妙才】
沛国出身。夏候惇の従弟。
孫堅【文台】
呉郡富春県出身。一八四年、黄巾討伐に参加。後に長沙太守となる。一九〇年、董卓討伐で汜水関を攻める。翌年洛陽に入り、伝国の玉璽を得て帰国する。
孫策【伯符】
呉郡富春県出身。孫堅の長男。
孫権【仲謀】
呉郡富春県出身。孫堅の次男。
周瑜【公瑾】
廬江郡舒県出身。孫策と義兄弟の契りを交わす。
盧植【子幹】
出身。若き日の劉備の学問の師。
公孫【伯珪】
遼西郡令支県出身。幽州の将軍。盧植門下で劉備の先輩にあたる。
皇甫嵩【義真】
安定郡朝那県出身。後漢の官僚。
朱儁【公偉】
会稽郡上虞県出身。後漢の官僚。
董卓【仲穎】
隴西郡臨出身。盧植にかわって黄巾討伐に参加。何進の宦官誅滅の招集に応じ、洛陽に入る。その後は権勢をほしいままにする。
何進【遂高】
南陽郡宛県出身。何太后の兄。霊帝の時の大将軍。
袁紹【本初】
汝南郡汝陽県出身。後漢の豪族で四代にわたり三公を出した名門に生まれる。董卓討伐にあたっては諸侯の盟主に立てられる。
袁術【公路】
汝南郡汝陽県出身。袁紹の異母弟。
丁原【建陽】
の刺史。呂布の義父。皇子弁の廃位に反対し董卓と対立する。
呂布【奉先】
五原郡九原県出身。丁原の義子であったが、後に丁原を殺し董卓の養子となる。
劉表【景升】
山陽郡高平県出身。前漢皇族の末裔。荊州刺史をつとめる。一九一年、玉璽を携え帰国した孫堅と争う。

※一の巻現在

北方 謙三(きたかた・けんぞう)

1947年、佐賀県唐津市生まれ。中央大学法学部卒。81年『弔鐘はるかなり』でデビュー。83年『眠りなき夜』で日本冒険小説協会大賞、吉川英治文学新人賞受賞。85年『渇きの街』で日本推理作家協会賞長編部門、91年『破軍の星』で柴田錬三郎賞を受賞。2004年『楊家将』で吉川英治文学賞、05年『水滸伝』全19巻で司馬遼太郎賞、07年『独り群せず』で舟橋聖一文学賞、10年に日本ミステリー文学大賞、11年『楊令伝』全15巻で毎日出版文化賞特別賞を受賞。13年紫綬褒章を受章。16年菊池寛賞を受賞。20年旭日小綬章を受章。著書に「三国志」「史記」「岳飛伝」「チンギス紀」「ブラディ・ドール」シリーズなど多数。

あとがき

三国志の日々

 書いている世界が狭い、と何度か感じた。
 現代小説を書いていて、ハードボイルドに限定すると、リアリティがやや窮屈になる。銃撃戦など現実ではほとんど起き得ないので、それにリアリティを持たせるために、かなりの紙数を費さなければならなくなる。ハードボイルドではない現代小説でも、やはり時間がリアリティを蚕食してくる。公衆電話を捜して夜中に街を駈け回ることなど、リアリティを持っていたのは、せいぜい二十年前までだろう。
 そこで私は、時間を飛ぶことを考えた。未来へ飛ぶ感性はないので、過去へ飛ぶことにした。つまり、歴史の中に、小説の舞台を求めたのである。
 それは、最初はうまく行った。歴史の中には、無数と言っていいほどの、事件があるのだ。それも頭で考えただけのことではなく、実際に人間が引き起こしたものだ。それに小説的な考察を絡めると、充分に面白い物語が立ちあがってくるのである。大いなる可能性を感じながら、私はかなりの数の歴史時代小説を書いた。
 歴史には、正史というものがある。つまり公的に記述されたものである。しかしそれが、すべての歴史というわけではない。公的な立場の都合不都合などがあっただろう。そこから排除されたもの、無視されたものも、しかし人はさまざまなかたちで残している。たとえば民話などがそうだと言える。そういうものをひっくるめて、稗史という。
 正史と稗史の間で、小説は自由に飛翔することができる。私はその可能性を信じたいと思った。しかし、私が中心的に書こうと思っていた時代が、かなり窮屈であるということがわかってきた。具体的には、南北朝時代である。そこで大きな物語を構想しようとすると、どうしても皇国史観というものにぶつかってしまう。私は、それに対して立場を持っていなかったが、描写するだけでも、相当の注意が必要だったのである。自由に飛翔するのは、困難であった。
 私は、五本ほどの長篇を書いてから、停滞し、他の時代に眼をむけて書くようになった。翼がないことが、どこか不本意でもあった。
 そういう時、私の耳もとに悪魔の囁きを流しこんできた人物がいる。その人物は出版人で編集者であり、しかも一流の表現者でもあった。仕事では、鉈のような資質の見せ方をしていたが、時に、日本刀の姿が垣間見えることもあった。
 角川春樹氏である。

 ※続きは(新装版)三国志 一の巻 天狼の星にてお読みいただけます。